第十一課 1.~てくる・~ていく(変化・開始) (1)~てくる 変化が生じることを表す ○だんだん春らしくなってきました。 ○雨が降ってきた。 ○最近少し太ってきた。 ○ずいぶん寒くなってきましたね。 ○このあいだ買ってあげたばかりの靴が、もうきつくなってきた。 ○問題が難しくて、頭が混乱してきた。 (2)~ていく ある時点を基準にして、それより先に向かって変化が進展し続けたり行為を続けたりすることを表す。 ○これからは、日本で働く外国人が増えていくでしょう。 ○日本ではさらに子どもの数が減少していくことが予想される。 ○見ている間にもどんどん雪が積もっていく。 ○その映画で評判になって以来、彼女の人気は日増(ひま)しに高まっていった。 ○今後もわが社の発展のために努力していくつもりだ。 ○結婚してからも仕事は続けていくつもりです。 2.~たら[どう]? 「V-たらどうか」の後半が省略されたもので、聞き手にその動作を行うように勧める表現。上昇調で発音される。普通親しい間柄の相手に使う。丁寧に話す必要がある場合には、後半を省略しないで「たらどうですか/いかがですか」などを使う ○今日は恋人の誕生日なんだ。 …電話でもかけてあげたらどう/いかがですか? ○少し熱があるみたい…。 …薬を飲んで、今日は早く寝たら? ○立って見てないで、ちょっと手伝ってあげたら? ○危ないからやめといたら? ○そんなに疲れているなら、少し休んだら? 3.~より~ほうが~(比較) 二つのものを比較して、「~ほうが」で表されるものの程度が高いことを表す。 ○今日は、北海道より東京のほうが気温が低かったです。 ○漢字は見て覚えるより書いて覚えるほうが忘れにくいと思います。 ○パーティーの料理は少ないより多いほうがいいです。 ○子どもに食べさせる野菜は、値段が安いより安全なほうがいい。 ○加藤さんよりも佐藤さんのほうが、親切に相談に乗ってくれる。 二つの事柄を比較して、どちらかを問う時に用いる。「のほう」を除いて「どちら」だけでもかまわない。 ○田中さんと井上さんとでは、どちらのほうが背が高いですか。 …田中さんのほうが背が高いです。 ○コーヒーと紅茶と、どちらのほうがよろしいですか。 …どちらでも結構です。 4.らしい NらしいN 同じ名詞を繰り返してその名詞の表すものの中の典型的なものを表す。 ○最近は子供らしい子どもが少なくなった。 ○男らしい男ってどんな人のことですか。 ○あの人は本当に先生らしい先生ですね。 ○このところ雨らしい雨も降っていない。 ○山本さんの家はいかにも日本の家らしい家です。 名詞に付き、そのものの典型的な性質がよく表れていることを表す。 ○春らしい色のバッグですね。 ○これから試験を受ける会社へ行く時は学生らしい服を着て行ったほうがいいですよ。 ○今日の田中さんの服は学生らしいね。 ○文句を言うのはあなたらしくない。 5.~らしい(伝聞、推量) 文末に付いて、話し手がその内容をかなり確実度の高い事柄であると思っていることを表す。その判断の根拠は外部からの情報や観察可能な事柄など客観的なものであり、単なるそうぞうではない。 ○新聞によると、昨日の朝中国で大きい地震があったらしい。 ○雑誌で見たんだけど、あの店のケーキは美味しいらしいよ。 ○先生の話では、試験の説明は全部日本語らしい。 ○みんなの噂では、あの人は国では翻訳家としてかなり有名らしい。 ○パーティーが始まったらしい。会場の中から賑やかな声が聞こえてきた。 ○山田さんはずいぶんのどが渇いていたらしい。コップのビールを一気に飲んでしまった。 ○その映画は予想以上に面白かったらしく、彼は何度もパンフレットを読み返していた。 ○料理はいかにも即席で用意したらしく、インスタントのものがそのまま並んでいた。 6.~として Nとして 名詞に接続して、資格・立場・部類・名目などを表す。 ○会社の代表として、お客さんに新しい商品の説明をした。 ○研究生として、この大学で勉強している。 ○日本軍の行った行為は日本人として恥ずかしく思う。 ○子どもがこんなひどい目に遭わされては、親として黙っているわけには行かない。 ○彼は大学の教授としてより、むしろ作家としての方がよく知られている。 ○軽井沢は古くから避暑地として人気があるところだ。 ○大統領を国賓として待遇する。 7.(1)~ず[に]~(付帯状況、手段) 「~しない状態で~する」という意味を表す。書き言葉。話し言葉では「ないで」となる。「V-ない」の「ない」を「ず」に変えて作る。「する」は「せず」となる。 ○その男は先週の土曜日にこの店に来て、一言も話さず、酒を飲んでいた。 ○急いでいたので、かぎをかけずに出かけてしまった。 ○辞書を使わずに新聞が読めるようになりたい。 ○途中で諦めず、最後まで頑張ってください。 ○きのうは財布を持たずに家を出て、昼ご飯も食べられなかった。 ○よく噛まずに食べると胃を悪くしますよ。 (2)~ず、~(原因・理由、並列) 否定の意味を表す。書き言葉や慣用的な表現でしか用いない。話し言葉では「なくて」が使われる。 ○子どもの熱が下がず、心配しました。 ○1時間待っても雨は止まず、濡れて帰った。 ○出発前日まで予約が取れず、心配させられた。 ○誰に聞いても住所が分からず、困った。 ○田中さんは今月出張せず、来月出張することになりました。 8.~ている(経験、経歴) 過去に起こったことを回想的に表す。それが何らかの意味で現在に関わりがあると思われる場合に用いる。 ○この寺は今まで2回火事で焼けている。 ○調べてみると、彼はその会社を三ヶ月前にやめていることが分かった。 ○私は、十年前に一度ブラジルのこの町を訪れている。だから、この町を知らないわけではない。 ○記録をみると、彼は過去の大会で優勝している。 ○北海道にはもう3度行っている。 ○田中さんは高校の時アメリカに留学している。だから、英語の発音がきれいだ。 まとめ: ○ミラーさんはいま電話をかけています。 ○授業はもう始まっている。 ○毎朝ジョギングをしています。 ○母と娘はよく似ている。
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